My Favorite Things|コーンウォールで出会った4枚の水彩画

ダイナースクラブの2026年7月号の会員誌“シグネチャー”にイギリスのコーンウォール地方の特集が載っている。コーンウォールは“ランズエンド”(Lands’ End)ともいわれる最南西部の海岸部の観光地で、“シグネチャー”はその魅力を取り上げている。
ところで、私にはコーンウォールには特別な思い出がある。
1981年の夏にコーンウォールで一週間の夏休みをとった。海岸の浜辺は涼しく過ごしやすかったが、海は冷たくとても泳げる水温ではなく、日よけの付いたデッキチェアーで熱い紅茶を飲んだ。氷のような冷たい海と熱い紅茶は、その夏の思い出の一つだ。
コーンウォール地方にセント・アイヴス(St. Ives)という美しい港町がある。避暑地としてにぎわっている町だが、僕にとってはどうしても行きたいところがあった。
バーナード・リーチはイギリス人の陶芸家であり、画家、デザイナーとして知られ、陶芸家濱田庄司と益子焼を広めたことでも知られる。
リーチは1979年5月6日92歳でセント・アイヴスで永眠したが、彼の画廊を奥様が営んでいて、その画廊を訪れたかった。
リーチがなくなって二年半後のことだ。画廊に入って奥様に挨拶し、一回りしたところで飾ってあった4枚の水彩画に目を奪われた。コーンウォールの海岸の水彩画で、海と空と水辺の人とを描いたものだった。
リーチ夫人にこの絵に興味があると言ったら、夫人が店の者に“リチャードを呼んで!”と叫んだ。びっくりしていると、リチャードという若い青年が現れた。飾ってある4枚の水彩画を描いた青年だ。
挨拶もそこそこに、その4点の水彩画をできれば買いたいと彼に話した。彼が示した価格は、幸いにも予定していた予算内だったので購入できた。この絵画を描いた若者はRichard Ayling(リチャード・アイリング)という、1950年生まれだから当時30歳くらいで物静かな青年だった。
彼はその後も、コーンウォールの美しい海岸線や自然を描いた繊細な水彩画や、油彩を多く手掛けている。彼が活躍して来たであろうことは、今も彼の作品がイギリス国内のオークションハウスで、定期的に取引されている事からうかがえる。お元気なら今年76歳になられる。セント・アイヴスに行かずとも彼と連絡の取りようはあったはずで、残念な思いが残る。
1981年のコーンウォールでの休暇は、セント・アイヴスのバーナード・リーチの画廊でのリチャードアイリングと、彼の4枚の水彩画との出会いという夏の日の素晴らしい思い出を残してくれた。
今、自宅に飾ってある彼の4点の水彩画は、私の大切な名画であり、宝物だ。
Thank you, Mr. Ayling!





