ブランドとは何か?ブランド戦略の本質を実務視点で解説

ブランドとは何か?
マーケティングや広告の世界では長年議論されてきたテーマでありながら、その本質は意外に誤解されていることが多い。
ロゴ、デザイン、広告、あるいは企業のイメージなどがブランドだと考えられがちだが、それはブランドの一部に過ぎない。
私がこの問いについて真剣に考えるようになったのは、広告代理店JWTに入社し、ブランド戦略の実務に携わるようになってからだった。
その背景には、1960年代から1970年代にかけてJWTロンドンで確立された アカウントプランニング という広告戦略立案の考え方がある。
アカウントプランニングの手法は Thompson Way として1980年代にJWTジャパンはじめアジア各JWTオフィスに採用されていった。
このブログでは、これまで
- ブランドの歴史
- ブランド価値の構造
- ブランド広告の役割
- ブランドの個性
- 実際のブランド事例
を紹介してきた。
JWTとアカウントプランニングの話をより良く理解する一助となればと思い、本記事では、それらを総合しながら「ブランドとは何か?」という問いの本質を、理論と実務の両方の視点から整理してみたい。
ブランドとは何か?
ブランドとは何かを一言で表現するならば、ブランドとは消費者の頭の中に形成される価値の総体である。
商品は企業が作る。
しかしブランドは消費者の認識の中に作られる。
同じ機能を持つ商品でも、消費者が感じる価値は大きく異なる。
例えば
- 洗剤
- シャンプー
- チョコレート
- トイレットペーパー
これらは本来コモディティ化しやすい商品である。
しかし、ブランドが確立されると、消費者は単なる機能以上の価値を感じるようになる。
その結果
- 指名買いが生まれる
- 価格競争から脱却できる
- 市場シェアが安定する
つまり
ブランドは企業の利益構造を支える資産になる。
ブランド価値は2つの要素で構成される
JWTのアカウントプランニングでは、ブランド価値を2つの要素のブレンドとして理解する。
それは
① 機能的価値(Functional Value)
製品そのものが持つ性能や品質。
例えば
- 洗浄力
- 耐久性
- 使いやすさ
- 技術力
などである。
これは消費者の 理性(Reason)に訴える価値である。
② 非機能的価値(Emotional Value)
ブランドが持つ
- イメージ
- 個性
- 世界観
- 信頼感
などの要素である。
これは消費者の 情緒(Emotion) に訴える価値である。
成功するブランドの特徴
成功するブランドは
機能的価値と情緒的価値をバランスよく統合している。
広告は
- 機能だけを訴えるものでも
- イメージだけを訴えるものでもない
ブランドは理性と感性の両方で理解される存在なのである。
ブランドの個性(ブランドパーソナリティ)
ブランドが成功するためには、明確な個性が必要である。
ブランドの個性とは、もしブランドを人間に例えたらどんな人物なのかということである。
例えば
- あるブランドは「家族思いの母親」かもしれない。
- あるブランドは「冒険好きの若者」かもしれない。
- またあるブランドは「信頼できる専門家」かもしれない。
この個性が明確であればあるほど、消費者はブランドを理解しやすくなる。
ブランド広告の役割
広告の役割は単なる販売促進ではない。
広告の本質的な役割は、ブランドの価値と個性を強化することにある。
JWTロンドンが扱っていたブランドの多くは、10年以上、基本戦略を変えていなかった。
例えば
- パーシル
- キットカット
- ギネス
- アンドレックス
などである。
広告表現は変わっても、ブランドの個性は一貫していた。
この継続性こそがブランドの価値を積み上げる。継続性の重要さは改めて取り上げたい。
ブランド戦略の成功事例
ブランドの考え方は理論だけでは理解できない。
実際のブランド事例を見ることで、その意味がより明確になる。
このブログではこれまで、いくつかのブランド事例を紹介してきた。
例えば
- ユニリーバのシャンプーブランド、ティモテ では 自然・ナチュラルというブランド個性が、明確に打ち出されていた。
- また、LUX では 「フィルムスターが愛用する石鹸」というコンセプトによって、高級感と憧れのイメージを作り上げた。
- さらに、ペプシチャレンジ では コカ・コーラという巨大ブランドに対し、消費者参加型のテストを通じて機能的価値でブランドイメージを揺さぶり、 若者にターゲットを絞った情緒的価値を継続的に訴求する戦略が取られた。
こうした事例は、ブランド戦略が単なる広告ではなく、企業戦略そのものであることを示している。
ブランドと企業の成功
強いブランドを持つ企業は
- 適正なマージンを確保できる
- 広告投資を継続できる
- 製品改良に投資できる
この好循環が生まれる。
逆にブランドが弱い企業は、価格競争に巻き込まれ、利益を確保できなくなる。
つまり、ブランド戦略は企業経営そのものなのである。
ブランドと消費者の対話
ブランドは、企業が一方的に作るものではない。
消費者との、継続的なコミュニケーションの中で育つ。
- 広告
- 商品
- 体験
- 口コミ
すべてがブランド形成に影響する。
その意味でブランドとは、企業と消費者の対話の結果とも言える。
ブランド戦略の原則
JWTで語られてきたブランド戦略の原則を整理すると、次のようになる。
- ブランド価値を継続的に強化する
- 機能的価値と情緒的価値を統合する
- ブランドの個性を維持する
- 消費者との対話を続ける
- 広告はブランド価値を積み上げる手段である
これらの原則は、1970年代に語られたものだが、現在でもまったく色あせていない。
まとめ
ブランドとは何か?
それは単なるロゴでも広告でもない。
ブランドとは、消費者の頭の中に形成される価値の体系である。
そしてその価値は
- 機能的価値
- 情緒的価値
の両方によって作られる。
ブランド戦略とは、この価値を長期的に育てる活動であり 企業の成功を支える最も重要な要素の一つである。
関連記事一覧
理論編
▶ ブランドとは何か?入門 〜 ブランド戦略を理解するための基本ガイド
▶ ブランドとは何か?第1章 ブランドの歴史 〜 ブランド戦略はどのように生まれたのか
▶ ブランドとは何か?第2章 ブランドの価値 〜 機能価値と情緒価値がブランドをつくる
▶ ブランドとは何か?第3章 トイレットペーパーの事例 〜 日用品ブランド戦略の考え方
▶ ブランドとは何か?第4章 ブランドの個性 〜 ブランドパーソナリティの重要性
▶ ブランドとは何か?第5章 ブランド広告の事例 〜 成功するブランド広告の共通点
▶ ブランドとは何か?まとめ 〜 ブランド戦略の原理原則と広告の役割
実務編
▶ アカウントプランニング誕生! JWTが生んだブランド戦略の革命
▶ LUXのブランディング 〜 ユニリーバのブランド戦略と広告の実務
▶ ユニリーバ「ラックス」ブランド戦略 〜 フィルムスターが愛用した高級石鹸
▶ ユニリーバ「サンシルク」開発プロジェクト 〜 ブランド戦略と商品開発の現場
▶ ユニリーバ「ティモテ」に学ぶブランドパーソナリティ戦略
▶ ペプシ・チャレンジとは?コカ・コーラに挑んだ広告戦略の実例
▶ ペプシチャレンジ秘話 〜 コカ・コーラに挑んだ広告戦略の舞台裏
▶ コダックのブランド戦略 〜 フィルム時代のマーケティングと広告の現場
▶ ジレットとシックのブランド戦略 〜 カミソリ市場の競争を解説
▶ ウールマークのブランドリニューアル 〜 国際羊毛事務局のブランド戦略
▶ エアラインの思い出 〜 航空会社ブランド戦略の現場
▶ エアラインの思い出(その2)航空会社ブランド戦略の現場
▶ GUINNESS IS GOOD FOR YOU







