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2020年6月20日 / 最終更新日時 : 2025年9月16日 bets アカウントプランニング

ジレットとシック

カミソリの機能的差別化は難しい

髭剃り市場

成人男性の身だしなみである髭剃りのニーズはスムースな剃り心地と安全性にある。これは古今東西変わらない。髭剃り市場はカミソリで髭を剃る消費者(ウエットシェイビング)と電気カミソリを使う消費者(ドライシェイビング)に二分されている。1960年代までは安全カミソリを使う層の前者が圧倒的だった。

ジレットは1901年に米国のボストンで創業し、1903年にT字型替え刃式安全カミソリを発売以来、長い間カミソリのブランドとしてアメリカ市場に君臨していた。

当時、安全カミソリは両刃でホルダーに入れて使うものだったが、アメリカの安全カミソリ市場で圧倒的優位にあったジレットは、ウエットシェイビングのカテゴリーを拡大することに注力した。

ジレットは両刃の安全カミソリの品質向上を目指し、それまでの両刃のブルーブレードから1960年代にはいるとより高品質でより剃り心地のいい、安全性の高いスーパーステンレスブレードを発売し、更に刃先のコーティングを改善したプラチナムプラスを導入して替刃市場をリードしていった。

ジレットの広告

当時、ジレットはJWTニューヨークの主要クライアントであり、その広告はあくまでもウエットシェイバーのユーザーを拡大させることが役割だった。

父親が息子に髭剃りを教えるものだったり、当時のプロ野球選手のトム・シーバーや、プロボクサーの元ヘビー級チャンピオンのジョーウオルコットを登場させて「ジレットは男のブランド」を訴えるものでウエットシェイビング市場を拡大し、維持することに主眼を置き、カテゴリーリーダーとして競合を意識することはなかった。

新製品競争

しかし、安全カミソリの市場も新製品の競争が激しくなってきた。従来のT字型替え刃式安全カミソリより安全でカミソリのより良い剃り心地を求める消費者のニーズに応えるべくワーナーランバート社は「シック」ブランドで新製品を発表した。

シック・インジェクターという新製品で、これまでの両刃でなくホルダーに片刃を差し込む製品を導入した。剃り心地の良さに加えて両刃より安全性が高くジレットの牙城を脅かす存在となっていった。

ジレット、シックの両ブランドは海外進出を進めてその競合は激化していった。

電気カミソリ

一方、電気カミソリメーカーも相次いで新製品を導入し、市場はドライシェイビングの電気カミソリという新しい力の台頭により大きく変化していった。ジレットはこの間、英国のウイルキンソンを吸収合併し、ドイツのブラウンを買収し、ウェット、ドライ両カテゴリーでのリーダシップの確保を図ろうとした。

日本市場

日本ではワーナーランバート社が流通対策で優位に立ち、シックインジェクターがウエットシェイビング市場のブランドリーダーとなった。

機能的差別化の限界

1970年代にジレットはG2と言う2枚刃のカートリッジ式替刃を導入。シックも同じタイプの商品を発売することになった。両社は新製品の導入で競い合った。

2枚刃は深剃りの効く、安全性が高い、画期的製品アイデアだったが、機能的には差別化は難しかった。その後今日まで2枚刃は3枚刃、4枚刃と進み、今では5枚刃が販売されている。

ジレットとシックのカミソリの機能的差別化は難しい。そうなると非機能的なアピールで差別化を図り、消費者のブランドの好意度を強化することが大切になっていくのではないだろうか?

その後

カミソリ市場での活動に専念していたジレットは2007年にプロクターギャンブルに吸収合併された。

一方、シックは医薬品、一般消費材を扱うワーナーランバート社の扱うブランド。シックの他、マウスウオッシュのリステリン、お菓子のメントス、ガムのリカルデントや観賞魚製品のテトラ・ベルクなど多角的な事業を進めてグローバル化し、マルチナショナル企業となっていった。

また、ファイザーと提携し1997年1月に高脂血症治療薬のリピトールを発売し、最初の12か月で米国の売り上げ高が10億ドルに達する大成功を収めた。しかし、ワーナーランバートは2000年に提携先ファイザーに吸収合併された。

ファイザーは菓子部門のアダムスをモンデリーズ社に売却。

またシックは電池メーカーのエナジャイザーに売却され、2003年に設立されたシックジャパン社の扱いとなった。

非機能的ブランドの価値

髭剃りのニーズは無くなることはない。カミソリブランド、ジレットとシックのつばぜり合いは続く。5枚刃の次に何が来るのか?5枚刃がきてその先何があるのだろう?技術的な進歩で考えもつかないミラクルがあるのかもしれない。

こうした機能的価値は、どちらも達成できることはこれまでの経緯でもはっきりしているし、差別化は難しい。流通、価格戦略が大切なことは言うまでもないがウエットシェイビング派の消費者が店頭で替刃を撰ぶ時「絶対ジレットだ!」「私はシックだ!」と思わせるためのブランドの価値が求められる。

どちらのブランドがどのようにブランドの好感度をより高め、ウエットシェイバーの支持を得るのだろうか? 正に、JWTのプランニングの原点の「ブランドとはなにか?」を思い起こさせる。

注:このbetsmemory.comで特集したJWTロンドン制作のスティーブンキングとジェロミーブルモアが語ったWhat is a brand?(ブランドとは何か?)を参照ください。


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