“What is a Brand?”
1970年代初めまでにロンドンでアカウントプランニング機能が確立された。当時英国では小売業の力が強くなり、メーカーはその対応に苦慮していた。JWTロンドンでは小売業の値引き、プライベートブランドへの対応として過去100年のメーカーと卸業、小売業と消費者の関係の変化を紐解き、ブランドの価値を維持強化することの大切さと、そのためのブランドの継続した広告の価値を訴えた。それがプレゼンテーションビデオ “What is a Brand?” である。
Planning Tool Kit
プレゼンテーションビデオには当時のアカウントプランニングのリーダーのスティーブン・キングさんとクリエイティブのリーダーのジェロミー・ブルモアさんが出演している。プレゼンテーションは50分近いので章に分けてその内容を紹介することとした。イギリスの多くの実例とともに日本の例も適用している。引用に関し、ご協力いただいたJWTジャパンと作品の関係者に感謝する。
現在は当時とは比べ物にならないくらい市場環境、消費者の消費行動、媒体環境等は複雑化し激変している。しかし “What is a brand?” で語られているブランディングの原理原則は、先人たちの英知で誕生した “Planning Tool Kit” として昇華、今日でも活用できる。これにかわるものはないと言っていい。
Planning Cycle
本題に入る前にスティーブン・キングさんが導入した「プランニングサイクル」について述べたい。今でこそどこでも当たり前のように使っているが、誰が開発したかはあまり知られていない。
「プランニングサイクル」は広告・ブランドプランニングの出発点であり、その枠組みの中にプランニング ツールキットの各手法がすべて収まる構造になっている。
「プランニングサイクル」は下記5つのステップをサイクルとする継続的な改善・改革プロセスだ。
- 私達は(担当するブランドが)今どこにいるのか?
- なぜそこにいるのか?
- どこにいけるのか?
- どうやってそこにいけるか?
- そこに到達しつつあるか?
これらの5の質問に答えていくことになる。
これがプランニングのフレームワークだ。
5番目の段階で所定の目的を達成したかに答えることは、1番目の「今どこにいるのか?」に戻ることになる。
つまり、プランニングサイクルは半恒久的に継続するプランニングプロセスなのだ。ブランドプランニングの継続性が仕組まれていることになる。
Planning Tool
各段階のプランニングツールは、下記の具体的な検討課題に対応している:
- 消費者のバイイングシステムはどのようなものか?市場及び消費者の心の中で競合ブランドに比べどう思われているか?
- 競合に比して我々のブランドの持つ強み、弱点に影響を与えている要因は?機能的、非機能的に。
- ブランド目的やブランドポジショニングについて現実的な設定か?ブランドの個性は?
- もっともプランニングにクリエイティブな思考が要求される。特に広告の役割、ターゲットグループ、期待される反応が重要な検討内容。予算設定や媒体ミックスの検討も必要だ。その要約としてクリエイティブ ブリーフが行われ広告のアイデアが作られる。
- 上記までの戦略とアイデアに基き制作された広告は、設定された目的を達成しているか?成果を検証、評価し次の段階と必要となる調査をどう役立てるかを詰める。
プランニングサイクルとその各段階で使われる「ツール」はワークショップを繰り返し疑似体験し、実務で使い込んで生きたプランニング ツールキットとして、実効をあげていった。
標準化されたプランニングツールによるブランディングメソッド
標準化されたプランニングツールを日本のみならず、インターナショナルで共有できることはマルチナショナルなブランド開発、促進を目指すメーカーにとっては目的達成のための強力な武器を持つことになる。つまり、メーカーはブランドのプランニングが標準化された手法で検討できる。
消費財、耐久消費財からサービスブランド等を扱うマルチナショナル企業は、こうした考えでグローバルブランドを開発し、市場を開発していった。
私達の経験から言っても1国のみならず、インターナショナルでケーススタディーやブランドコンセプト、広告アイデアを実習し、プランニングの標準化のメリットを体験することが大切だ。
定性調査はもとより、AIの手法により定量的な実査が迅速かつ正確に、インターナショナル市場で検証できる状況にあることは、プランニングをさらに進化させる機会を与えているといっていい。
例えばソフトドリンク業界。コーラやフレーバー飲料が中心だった時代からお茶、ミネラルウオーター、コーヒードリンク、健康飲料など考えられないほど多様化が進んだ。
ベンディングマシンは普及が進み拡大の余地があまりない状況という。
製品開発の技術は進歩し、新機能の商品が次々とが導入されている。機能だけの競争は先行してもコピーされる。ブランドの個性での差別化が大切だと思う。また、スーパーマーケット、コンビニ、チェーンストアなどの重要性はかってと比較にならないほど強大で脅威だ。
強力な Private Brand との競合、異業種の参入への対応、また異業種への進出をブランドの機能的価値と非機能的価値を最大限活用して新しい機会を得る。ペプシやコークがアルコール飲料に打って出ることを考えることがあっただろうか?「やってみなはれ!」、先人の言葉は重い。
これからの “What is a Brand?” の各章をこうした背景を基に見ていただきたい。
“What is a Brand?” が提唱する Planning Cycle と Planning Tool Kit によるブランド開発事例として、下記記事も参照されたい。