新たなプランニング手法の開発チーム
JWTロンドンでスティーブン・キングさんを中心にそれまでのマーケティング・リサーチ機能を進化させ初めてアカウントプランニング機能(AP)を立ちあげたのが1968年。彼と一緒に新しいプランニング手法を整備していったチームにはプランニングディレクターのトニー・ステッドさんやクリエイティブリサーチ(質的調査)のジュディー・ラノンさんなどがいた。
キングさんはクリエイティブとの協業が消費者インサイトにもとづく広告戦略立案を成功させる秘訣だと見ていた。パートナーであったクリエイティブリーダーのジェロミー・ブルモアさんを得たことは幸いであった。
アカウントプランニングの標準化
APではこうした主要メンバーを中心にプランニングツールキットをまとめ上げ、APのプランニングの質の向上とクリエイティブ、アカウントマネージメントの理解とプランニングの標準化を進めた。1970年代に入ると、キングさんたちのアカウントプランニングは優れたブランド戦略を導きだし、クリエイティブアイデアの開発に貢献していった。
そのクリエイティブの質の高さで数々のブランドが成功を収めていった。
“What is a Brand?”の誕生
当時、英国は経済不振に悩まされていた。一方、小売り業者が強くなりプライベートブランドの台頭に伴い、メーカーは価格競争に巻き込まれていった。当然、マージンを下げ、マーケティング予算を販促に回すメーカーが増えていった。
こうした動きに警鐘を鳴らして広告費を維持し、ブランディングすることの大切さを訴えたのが”What is a brand?”というビデオプレゼンテーションである。1971年の事だ。
キングさんはブランドの価値を実証するためにチームを指揮し、19世紀からのメーカー、卸店、小売業そして消費者の関係を紐解いていった。
成功するメーカーには成功するブランドがある。愚直に事実に基きブランドの価値を紐解いたのがこのプレゼンテーションだ。
“What is a Brand?”の内容
イントロはパッケージグッズからガソリン、耐久消費財、鉄道、エアライン、ホテル等英国で当時成功していたブランドをとりあげている。
続いて始まるプレゼンテーションは向かって左がスティーブン・キングさん、右がジェロミー・ブルモアさんだ。お二人とも後年親会社のWPPの取締役を務められた。
厳しい経済環境にあっても広告予算を減らすことなくブランドを継続してサポートしたメーカーがマーケットでのポジションの維持に成功している。JWTロンドン扱いのブランドにはユニリーバのパーシル(洗剤)、ケロッグコーンフレーク、ギネス、ポロ(ミント菓子)、キットカット、ブラックマジック(ブラックチョコレートギフト)アフターエイト、TSB(銀行)、ガーディアン(新聞)など継続性のあるブランド広告で育っていったブランドがある。まさに継続は力である。
今日の日本の状況も寡占化した小売業とPBにメーカーは圧されている。キングさんたちが経験したブランドの危機より今の日本の状況ははるかに複雑だ。成功している小売業はブランド広告に力を入れている。60年代後半の英国にはなかった。日本でのメーカーのブランド広告戦略に継続性がなくブランド広告に際立ったものがすくないと思うのは私だけかな?