「角七」の酒
小学生時代は七尾で過ごした。
住んでいた木町(きまち)の家の前に通称「角七」(かくしち)という蔵元があった。杉玉が吊るされていて、広い入り口を入ると右側に帳場があり、左側は洗瓶場などがあったと記憶している。突き当り右奥に広い庭があり、よく大きな樽が干してあった。
一つ年上の息子さん(坊やと呼んでいた)とよく遊んだが酒の匂いのする「角七」で遊ぶのが好きだった。
酒が仕込まれるといい匂いが近所にたちこめはじめる。絞り終わると薄い板の様にのした酒粕を近所に配られ、その晩はどこの家も粕汁。私は小さく切った酒粕をそのまま食べるのが好きだった。