「LUX FROM ENGLAND!」
LUX(ラックス)は戦後進駐軍と共に日本に入ってきた。
その質の良さ、香りのよい高級品でなかなか手に入らなかったそうだ。
今でこそLUXはヘアケアブランドとなっているが1970年代までは化粧石鹸のブランドだった。
1950年代にはラックスはユニリーバの輸出部門のユニリーバエキスポートが英国から輸出し、商社のドッドウエルを通して日本市場に流通していた。当時、化粧石鹸はお中元・お歳暮の主要品目であった。
JWTが贈答品としてのラックスの広告を担当した。
英国産の高級化粧石鹸で、贈答に最適であることを印象づけることがブリーフだった。
1967年に始まった、「LUX FROM ENGLAND!」のナレーション(もちろん英国人の)で始まる近衛兵を登場させた広告は、夏と年末の贈答期にTVから流れ、瞬く間に話題になった。
1964年にユニリーバは日本法人豊年リーバ(株)を豊年製油と設立し、本格的に日本市場でビジネスを展開していくことになった。
当初は業務用ショートニング、マーガリンのラーマを販売したが、ラックス化粧石鹸(LUX TOILET SOAP)を1972年から販売開始。
グローバルブランドのラックスは日本でもJWTの重要な広告ブランドとなっていく。
フィルムスターのラックス
アメリカで1930年代から始まったLUXの広告は「ハリウッドスターの10中9人はラックスを使っている」というものだった。JWTロンドンで戦後この広告アプローチを更に改善し、「フィルムスターの使うラックス」というストーリーをより共感できるものにしていった。
フィルムスターが使い、個人的に使用を推薦するというアプローチを取った。フィルムスターが肌の手入れには石鹸はラックスが良いと自ら愛用し、彼女たちが自薦するアプローチで、ラックスのブランド価値を高めてより高い信頼性を得て行くことに成功した。
日本でもこのグローバルのブランド戦略に基き「フイルムスターが使い、推薦するラックス」という広告戦略に変更していった。世界のフィルムスターが使用し、推薦するラックスは高級化粧石鹼としての価値を一層高め、日本のフィルムスターは贈答用に最適というブランドアピールを強化し、日本人の肌に良いということを信用させた。
世界各国と共有した世界のフィルムスターはブリジット・バルドー、ソフィア・ローレン、ナタリー・ウッド等々スーパースターが登場し、岡田茉莉子、三田佳子、若尾文子、十朱幸代の日本人スターの推薦はすばらしいキャンペーンとなり、ラックスのあとは贈答市場とばら売り小売り市場で多大な成功を収めた。
その後石鹸市場は固形石鹸から液体ソープに変わっていった。高度成長期の贈答慣習の変化もあって、贈答市場での化粧石鹸の需要は低くなっていった。
しかし、LUX(ラックス)フィルムスターが愛用し、推薦するブランドであるという個性はヘアケア製品に継承され、シャンプー/リンスのトップブランドとして大成功を収めていく。フィルムスターにとって肌と同じように髪の美しさも命。美しくあるためのラックスのブランドアピールは更に強力なブランドの個性として確立されていったのだ。
JWTとユニリーバの関係は2002年で100周年を迎えたがLUXはJWTとユニリーバの絆として次の100年へと進んでいく。