ロンドンはペット天国!
これからの話は1980年初めの話だとお断りしておく。英国人はペットを大切にする。私は犬派なので愛犬のサムとわたしの話を交え英国のお犬様の話をしたい。
1980年に東京から連れて行った和犬の雑種のサムは2年の短い間だったが英国の生活を満喫した(と思う)。
犬は室内で飼う!
動物愛護協会の人が見回っていて外で飼っていると室内で飼うよう忠告される。屋外で飼うのは虐待につながるということだ。
サムは東京にいるときから室内で飼っていたから私にとって犬は室内で飼うものと思っていたので問題はなかったが日本から赴任され、ロンドンで屋外に犬を飼おうとして動物愛護協会の警告を受け室内に飼うことになった方何人もいると聞いた。
昼夜24時間診療する公営動物救急病院がある!
サムが散歩中生垣に顔を突っ込んで中にいた猫に目を引っかかれ、角膜に傷がつくけがをした。近くの救急病院に連れて行ったが女医さんが診察台に上がっているサムに「ひどい猫ね!」とサムに話しながら目の傷の治療をした。サムはじっと目を女医さんに向け薬を塗ってもらった。
治療費は無料だったが2日目に治療に行くと彼女は私の住まいの近くの獣医を紹介してくれた。救急の場合を除き、基本的に年金生活者がペットの診療を受ける施設なのだ。
交通機関は犬連れOK!
犬を職場に連れて来る人もいる。大きなシェパードを連れて通勤電車に乗っている人をよく見かけた。犬が座席に座り飼い主が立っている!犬の足が他の通勤客に踏まれないようにということだ。誰も文句を言わない!
ロンドンのダブルデッカーという2階建てバスに飼い主と大型犬が乗っていた。犬は無料だったと思う。サムは会社には連れて行かなかったからチューブ(地下鉄の形状がチューブに似ているところからの通称)にもダブルデッカーにも乗らず移動はもっぱら私の愛車のフォードだった。
ハロッズ(ロンドンの有名なデパート)は食料品売り場とレストラン以外は犬連れOKだったと記憶している。ハロッズは食料品は高いから一緒にショッピングに行ったことはない。
英国のゴルフ場は犬連れでプレーできるところが多い。(セントアンドリュースのオールドコースもOKだった。)リーダースダイジェストのゴルフガイドで確認できた。サムにとってはいつもより長い散歩を私に付き合うことになる。
パブはイヌ連れOKのところが多い。「Good Beer Guide」に詳しく載っている。週末よく行ったパトニーの「Arab Boy」にはオーナーの飼い犬のラブラドールがいた。サムが私と行くと必ずそばに来たが「おまえか」という感じでオーナーのそばに戻った。サムはわたしの足元でおとなしくしていた。
週末の散歩
週末はサムと「Arab Boy」に行く前にパトニーコモンという住民の共有地を散歩した。住民が Rate という地代を何世代にも渡って払っているため再開発にあわずコモンが存続した。ロンドンの住民の生活の知恵だと思う。
ある日サムをリードしないでいつもと違い散歩の終わりのところから散歩を始めた。しばらくして振り返るとサムがいない!呼んでも姿がない。しばらく探したがいない!家に帰って車に乗り探したがいない!
途方に暮れて家に帰ってどうしたものか考えていると玄関の外の扉をひっかくような音がした。飛び出してみると頭を下げごめんなさいというように上目使いで私をみているサムがいた。思わず抱きしめた。いつものルーティンと違ったので散歩の最後のところで私を見失ったと思い必死で帰ってきたようだ。
途中にロウアーリッチモンドロードという交通量の多い道があった。犬が渡ろうとすると車は皆止まってくれる。この道をサムは渡って帰ってきたのだ。この時ほどロンドンのドライバーの犬を思いやる態度に感謝したことはなかった。同時に自分の不注意を大いに反省した。
厳しいしつけ
一見お犬様のような扱いだったが飼い主は愛犬にしっかりしつけをすることが求められる。犬の糞は車道ならいいが歩道はダメ。人と犬が共存するために飼い主が規則を守らないと厳しいペナルティがある。
例えばリッチモンドパークのような野生の鹿や小動物、鳥がいるところでは犬のリードを放すことは危険だ。犬が野生の動物に危害を与えると最悪殺処分になる。言い訳は通じない。ルールを守ることが前提。当然のことだが親は子供だけでなく飼っているペットのしつけをしっかりすることが求められていた。
厳しい検疫
島国なだけに英国の検疫はきびしかった。入国するには6か月の検疫をうけ、隔離される。ヒースロー空港の近くのウイロスリーというところに検疫用の施設があった。
土曜日ごとにサムに会いに行ったがハロッズの犬用スペアリブがおみやげだった。施設は夏、涼しく、冬は暖房が入り一匹ごとに隔離された犬舎があり、扉を上げると隔離された散歩道があった。サムには快適な生活だと思えたが2時間の面会が終わり、犬舎を離れると「うおーん!」と啼くサムの声が聞こえた。一緒に帰りたいと訴えているようだった。
6か月の検疫が終わり連れて帰ると、しばらくはあとを追ってそばを離れなかった。サムは一層ファミリーの一員になった。
サムは一足先に帰国した
英国の検疫が厳しい故に、英国から日本の帰国に際して検疫留置はない。即日入国、JALのカーゴ便のコックピットの下にヒーターが効いた収納用スペースがありサムはそこに入れられてヒースローから成田に直行便で帰り、JALのカーゴ担当の友人が実家に届けてくれた。(実家に着くなり我慢していたオシッコをジャージャーした。)
サムと私が帰国してから35年経つ。サムは帰国10年後に16才の天寿を全うした。
日本のペットを取り巻く環境も大きく変わった
集合住宅でペットを飼えるようになり、室内で飼育することが普及した。当然、ペットの寿命も伸びた。老齢化社会になるにつれペットの役割も大きくなってきた。ペットフードや関連商品も充実してきた。24時間の救急病院もできた。また、ペット保険もある。
サム、ずいぶん変わったね。でも、ペットを思いやる気持ちはどうなのかな?行政の対応はどうかな?まだロンドンにいた方がいい?もちろんおとうさんといっしょにでだよ。