AXNミステリー「ルイス警部」

Lewis | ITV

AXNミステリーの名警部たち

1987年から2000年まで33話放映された「主任警部モース」はモースの死で終了した。原作者のコリン・デクスターは「主任警部モース」を47話まで書き上げていたという。モース役のジョン・ソウの健康理由から33話で終了させざるを得なかったようだ。そこで原作の続編を「オックスフォードミステリー ルイス警部」としてモースの部下だったルイスを主役に据えて制作された。続編はグラナダTV制作、ITVから2006年から2015年まで33話が放送された。

AXNミステリー ルイスとハサウエイ

モース警部に敬意を表し、ルイス役のケビン・ホエートリーがこのシリーズもモース警部と同じ33話で終えることを希望したという。

物語りはモースの死後、海外に赴任していたルイスがオックスフォードに戻ってきて、新しい部下のジェームス・ハサウエイとの出会いから始まる。

ハサウエイはケンブリッジ大学で神学を専攻した異色の刑事で、ルイスの捜査を学識的側面から補佐する。はじめは頭でっかちのところもあるがだんだん頭角を現す。

ルイスはモースのように自説を部下に押し付けることはなく二人の主従関係は良好だ。ハサウエイはインテリで博識で、絵画をはじめ、ギリシャ神話などに詳しく、ルイスはハサウエイの話から捜査のヒントを得ることもある。

ルイスはクリケットのプレーヤー、ハサウエイはエイトの漕ぎ手で二人はスポーツマンとして描かれている。

ルイスは既婚で子供もいる。モース警部時代のルイスはマイホームパパだ。夫として、父親としての悩みを語る家庭人だ。モース時代の13年間、ルイスのシリーズの9年間の都合22年間、ルイスは劇中「生活」したことになる。

変化

当然、時代とともに家族関係も変わっていく。ルイスシリーズでは成人した娘は独立して自活し、ルイスと妻はいわゆる「カップルアゲイン」となる。

仕事環境も変わっていく。ルイスは警部になり、パートナーは部長刑事のハサウエイになり、上司もストレンジからイノセント女史の警視正になる。(イノセントとは潔白とか、良識がないとか、人任せとかあまりいい言葉ではないが・・・コリン・デクスターの命名の意図はなんだったのか?時には陣頭指揮に立つストレンジ警視正とは違い、イノセント女史は現場から距離を置く傾向があり、事件を指揮することはあまりない!)

フロストやモースの場合ほど上司から合理化の圧力はないが、女性の上司ならではの感情の対応に戸惑うこともある。

そして人生のパートナーとの関係にも大きな変化が起こる。ルイスはロンドンに出かけた最愛の妻を交通事故で失う。ルイスはひき逃げ犯人の糸口を探すべく、公務の合間に無き妻に関連する事故記録を懸命に調べるが糸口が掴めず、思い悩む。見かねたハサウエイがルイスの心境を慰め、犯人捜しを諦めさせようとするがルイスは思い切れない。

そうした中でルイスは捜査のチームメイトである監察医のローラ・ホブソンと親しくなっていく。しかしルイスはローラに心惹かれながらも、失った妻への思いを振り払えずローラに積極的になれない。ルイスの気持ちを分かっているハサウエイはルイスとローラが上手くいくように暖かく支援する。

そして自分自身のキャリアの変化も迫る。ハサウエイが警部に昇進し、ルイスはいったんリタイヤしたが、イノセントが嘱託としてハサウエイを補佐するポジションをオファーする。イノセントは昇進する。後任の黒人の警視正ムーディーは合理化を進める一環としてルイスの嘱託を解消しようとする。

同じころローラとルイスはニュージランドに長期休暇を計画するが、ムーディーの意図を知っているルイスは解雇の口実を与えたくないということから休暇をキャンセルしたいとローラに打ち明ける。

「モースとおなじ仕事人間なりたいの?」とローラに迫られる。

結局ルイスはハサウエイに背中を押されてローラとニュージランドへの長期休暇にはいる。ハサウエイは空港で二人を見送る。

第1話でルイスをハサウエイが空港で出迎えるところから始まり、33話でハサウエイが空港で二人を見送るところでオックスフォードミステリー「ルイス警部」は終わる。

モースの時のような終わり方ではなくこの後どうなるか?続きを予感するような終わり方だ。

関係者は復活を期待していたことは想像に難くない。しかし、ケビン・ホエートリー(ルイス役)とローレンス・フォックス(ハサウエイ役)の33話で終了させるという決意は覆ることはなかった。

ブランドを重視する英国の土壌

ルイスとハサウエイは上司と部下の関係からハサウエイが昇進し、ハサウエイが捜査の主担当となり、ルイスは嘱託として補佐に回り、二人は同僚の関係になる。兄弟のような、友人としての情感を感じさせるところがいい。パブのテラスやオックスフォードの街並みを背景に二人がいるシーンに美しいエンディング・テーマ曲が流れてエピソードが終わる。事件のテンションからリリースされるさわやかな気持ちになる。

オックスフォードの街並みや大学の様子がふんだんに演出され、素晴らしいエンディング・テーマ曲と相まって何度見ても楽しい番組だ。

英国の番組の特徴は当然ながら、出演する個性的な俳優が素晴らしい名演技をみせる。

息が長く継続性があること。原作や脚本がすばらしいこと。テーマが一貫していること。テーマ音楽が個性的で美しい。

こうした特徴をみると、英国でブランドの個性や継続性が広告に重要視される土壌があることがよく分かる。

ところでコリン・デクスターのカメオ出演は「ルイス警部」シリーズでも続いた。彼も33話で終わらせたくなかったはずだ!


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