AXNミステリーの名警部たち
AXNミステリーチャンネルには数多くの刑事ものが登場する。多士済々だ。時代とともに警察の捜査手法が変わっていく中、合理化のプレッシャーにめげず、人間味溢れる刑事たちの仕事ぶりは興味深い。ここでもやはり英国のBBCとITVで放映されたものが抜群におもしろい。
フロスト警部
RDウイングフィールドの小説を元にヨークシャーTV制作のフロスト警部(A Touch of Frost)は1992年から2010年までITVで42話放映された人気番組だ。
主役のフロストを演じるのはサー・デイビッド・ジェイソン。
現場志向が強く、署内食堂で人のお茶やコーヒーを横取りして飲み、服装も垢抜けしない、口も悪い、一見、横柄な警部だ。
いかにもまずそうなパンがべちょべちょになったサンドイッチを平気で食べる、およそポアロはおろかジャップ警部とも全く違う食音痴ともいえるキャラだ。
小太りで髭を生やし家もオフィスも車の中も散らかしっぱなし!書類の整理が大の苦手。型破りで、独断で動く彼は上司で署長のノーマン・マレットとはよくぶつかるがフロストが事件を解決するため事なきを得てきた。
官僚的で出世志向の署長のマレットは上からの人事の合理化の圧力を受け、何度もフロストを解任させようとするが、ジョージ勲章を授与され主任警部に昇進して難をのがれる。
フロストとマレットはお互い“LOVE/HATE”(愛憎)の間柄だ。
しかしフロストは同僚や部下からの信望があつい。
南ミッドランドの架空の町デントンの警察での仕事は、同僚ジョージ・ドーランに支えられている。
フロストの時代はまだPCが導入される前、デントン署では文章保管係アーニー・トリッグの記憶と文書データファイルが頼みのマニュアルな時代だ。
データベースはおろかPCのない時代の警察の捜査だ!
番組の初めの頃、フロストは妻とうまくいかず別れるつもりだったが、妻が末期がんであることで離婚を断念する。
妻の死後、交際する女性は何人か登場するがうまくいかない。
フロストはなぜかインド料理が好きだ。
デートというと行きつけのインド料理のレストランだ。
白黒の画面で吹替なし。
この時代にピッタリ。
シリーズの終わりに近く、禁止されている闘犬に絡む殺人事件の捜査で英国動物愛護協会(RSPCA)のオフィサー、クリスティンと親しくなる。
施設が犯人の雇った刺客に放火されるが保護されている犬たちも彼女もかろうじて難をのがれる。
フロストは彼女の息子と親しくなったのをきっかけでクリスティンと結婚することになる。
彼女のアル中の元夫が逆恨みし、結婚式当日ベストマンをつとめるジョージが運転しフロストの乗る車に、フロストを殺す目的で泥酔状態の元夫が車で突っ込み、ジョージが死ぬ。幸せが一転、悲しい結末に。教会に安置されたジョージの棺の前で最後の別れをする。
フロストは68才。ジョージの死でフロストは犯罪捜査を離れ、現役をリタイヤし、クリスティンと新しい生活に向かうことを誓う。