銭湯に入って飲んで食べる浅草ストーリー、もう一つの浅草

曙湯
ビートたけしが通った奥浅草の曙湯

奥浅草

観音様と浅草神社(三社様)の間を通り抜けると言問通りに出る。この通りを渡ると地元の人が観音裏とか奥浅草と呼ぶ地域になる。言問通りに面している雷ゴロゴロ会館脇の柳通りを中心に浅草の花柳界があり、粋な風情の料亭、待合はじめ、レストラン、寿司屋、小料理屋、キッチン、蕎麦屋、和菓子屋などがある。夕方になるとお座敷に向かう芸者衆を見かける。柳通にある見番を中心に、奥浅草というのにふさわしい粋な街並みだ。

宮戸座の跡があったり、お富士様(富士神社)をお参りしたり、奥浅草を散策するのも楽しい。「お富士さん」と呼ぶ植木市が4月、5月、6月と開かれる。江戸時代、浅草猿若町(今の浅草六丁目)に三座(中村、市村、森田)が日本橋から移り興行が行われて以来の、粋な浅草の良さが残るいい界隈だ。猿若町や象潟(きさがた)といった江戸の名残の地名がのこっていないのは残念だ。(町名変更は歴史を消した行政の愚行だったと思う。)

六区は様変わりしてしまったが、仮設の中村座が観音様の境内で行われたり、オレンジ通りの浅草公会堂では、若手の歌舞伎俳優による公演が行われる。公会堂前には多くの芸能人、著名人の手形がある。(ハリウッドのチャイニーズシアターのスターの足型が有名だがその日本版だ。)興行の街の努力は続いている。

好きな店

ところで浅草にはいいお店がある。ここからは私の好きなところを挙げてみたい。

六区の喫茶店の「アロマ」、くじら料理の「捕鯨船」、大衆割烹「水口食堂」がいい。また、浅草のビヤホールと言えば浅草1丁目1番地の「神谷バー」。昔は東武伊勢崎線で神谷バーに出かけてきてデンキブランをチェイサーに大ジョッキを傾けるお客が多かったとか。生ビールがおいしい!

居酒屋「さくま」

さくま ある日のお任せ料理言問い通りに面して大衆酒場「さくま」がある。

私にもなじみのところだが「浅草キッド」に出てくるのはうれしい。特にビートたけしが「さくま」によく飲みに行ったのを知って感慨深い。

おいしいお料理とお酒の居酒屋(決して酎ハイと煮込みだけではない)。日替わりのおいしいお料理がうれしい。

もちろん定番の煮込みは初回の客は必ず食べてもらうことになっているという。

人形町日山の牛肉を使ったステーキもある。日替わりの刺身、焼き魚、煮魚や煮物が名物。元々酒の販売をしていたそうで、戦後、酒不足の頃「さくま」の世話になった浅草の酒場もあるという。昔からさくまの日本酒はあさま正宗だ。

浅草で「さくま」ほどお酒やビールの安いところはあまりない。
5時の開店とともに常連客でいっぱいのことが多い。予約するのが賢明だ。

大学いもの「千葉屋」

千葉屋
さくまと同じ言問い通りに面して紹介したいのが大学芋の「千葉屋」がある。

揚げた大学いもは2種類。乱切りで揚げた大学いももおいしいがさつまいもを薄くチップのように揚げ甘いたれとゴマをかけた「切り揚げ」がうまい。これを摘まみながらウイスキーをやるといい。

10時に開店だが、あっという間に売り切れて、次の揚げるのを待たなければならないこともたびたび!ご主人と男衆ひとりと奥さんで切り回している。こうした昔ながらの商売を変えないのも浅草らしい。

アンパンの「あんです」

あんですのあんぱんマンやはり言問い通りの「さくま」のすぐそばに「あんです」がある。

元々あんこ屋だっただけにあんの種類も多くおいしい。暮れにはあんこを売りに出すのが恒例。

10種類ほどあるアンパンはどれにするかしばし考える!アンパンマンは子供たちの人気者。若いパパがお子さんと買いに来るのをみて思わず微笑んでしまう。

私は昔懐かしい三色パン(こしあんとクリームとチョコレートが入った)でハイティーがいい。

銭湯巡り

浅草に遊びに来てた頃はアロマでコーヒーを飲み銭湯に行き、飲みに行くのが定番だった。

浅草の銭湯はロックの蛇骨湯が有名だ。露天風呂があり、サウナ完備。外人にも人気だ。かっては浅草時代の渥美清も常連だったとか。

ビートたけしが通った奥浅草の曙湯は藤が咲く頃は昔ながらの風情が見事な銭湯。浴場は天井の飾り絵が豪華。清潔で明るく気持ちがいい。

千束通りを進むと浅草4丁目にアクアプレイス旭がある。サウナと水風呂がある明るい銭湯。ここまでくると土地の人が中心で外人はいない。

昔ながらのスタイルの銭湯が富士神社そばの「鶴の湯」こちらも土地の人が大半の浴場だ。どの銭湯も個性があり早い時間に楽しみ、飲みに行くのがいい。

居酒屋「松風」

さくまに5時に行く。帰りに神谷バーによるのがいつものコースだったが早い時間にいく酒場があった。「松風」だ。

厨房に数人、こも被りと一升瓶が並んだカウンターに酒を注ぐマスターがいた。酒は一人3合までと決まっていた。酔っ払いはいない。本当に酒好きが静かに飲む場所だった。注文された酒を店員が大声で告げるとマスターが「はーいー」と独特の符牒で答え、注文された酒を一升瓶からマスに注ぎ徳利に入れたしきたりだった。その掛け声がなんとも風情があった。つまみは小皿のつくだ煮や、煮物。酒一合に一品。あくまでも酒の肴だった。大変盛況だったが数年前突然閉店した。

浅草らしい、池波正太郎が好みそうな浅草らしいいい居酒屋だった。
浅草に住むようになっても「松風」に代わる店はないものかと思う。アロマのマスターに聞いてみよう。

まだまだ浅草のアナザストーリーはつづく。


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